鋳物の検査・塗装・出荷とは?完成した鋳物がお客様へ届くまで
仕上げた鋳物の品質を確認する
仕上げや熱処理を終えた鋳物は、要求された品質を満たしていることを確認するため、各種検査を行います。
鋳物に求められる品質は、製品の形状や用途、材質、図面・仕様などによって異なります。
そのため当社では、すべての製品に同じ検査を行うのではなく、外観、寸法、硬度、内部品質、材質など、製品ごとに必要な検査項目を設定して品質を確認しています。
また、検査で異常が確認された場合には、そのまま次工程へ進めることはせず、必要な処置を行ったうえで適合性を確認します。
検査に合格した製品は、指定された塗装を行い、出荷する製品との照合や最終確認を経てお客様へ納入します。
ここでは、当社で行っている鋳物の検査から塗装、出荷までの工程をご紹介します。
※実施する検査、塗装、梱包などの内容は、製品やお客様の要求仕様によって異なります。
検査から出荷までの流れ
1.外観・仕上げ状態の確認
仕上げおよび必要な熱処理を終え、再度ショットブラストを行った製品は検査工程へ進みます。
量産品では、外観に異常がないことや、鋳バリ、余肉、焼きつきなどの仕上げ残しがないことを全数確認します。
鋳物は製品によって形状や使用目的が大きく異なるため、確認する項目も製品ごとに異なります。
例えば板形状の製品では反りや張りの有無を確認し、ギア、プーリー、タレットなど強度が求められる製品では、必要に応じて硬度を確認します。
このように、基本的な外観確認に加えて、その製品で特に重要となる品質特性を確認します。
2.模型の受入検査と初品の寸法確認
鋳物の寸法品質を安定させるためには、製品を製造するための模型が正しい形状であることが重要です。
当社では、新たに製作された模型を受け入れる際、図面に記載された寸法を確認し、模型に異常がないことを確認してから製造に使用します。
また、新規製品の初品鋳物については全数で形状・寸法を確認します。
一度確認された模型を使用して同じ条件で造型することで、基本的には初品で確認した形状がその後の製品にも再現されます。そのため、量産品についてはお客様から指定がある場合を除き、初品と同じ全寸法検査を毎回行うのではなく、必要な検査項目を確認します。
ただし、模型の変形や摩耗、製造上の異常などによって寸法への影響が疑われる場合には、改めて寸法・形状を確認します。
3.3Dスキャンによる形状・寸法検査
当社では、初品鋳物の形状・寸法確認に3Dスキャナを活用しています。
お客様から製品の3D CADデータをご支給いただいている場合には、鋳物を3Dスキャンして取得した測定データとCADデータを比較し、製品全体の形状や寸法を確認します。
3Dデータのない製品については、図面に基づいて必要な箇所を実測し、寸法を確認します。
また、量産中の製品について寸法不良が疑われる場合にも3Dスキャンを行い、初品測定時のデータやお客様から支給された3D CADデータと比較します。
点や線による寸法測定だけでなく、製品全体を三次元データとして比較することで、変形や形状の違いを視覚的に確認することができます。
3Dスキャンは基本的に鋳物の検査に使用していますが、必要に応じて模型側面や木型定盤などの平面度を確認し、模型の摩耗や変形状態を把握するために活用する場合もあります。
4.UT・PTによる非破壊検査
外観から確認できない内部の状態や、目視では判断しにくい微細な欠陥については、必要に応じて非破壊検査を行います。
UT(超音波探傷試験)は、お客様から検査の指定がある製品に対して実施します。
また、指定がない場合でも、厚肉部など過去の経験から引けが発生する可能性があると判断した箇所については、自主的にUTを行う場合があります。
鋳物の形状、肉厚、凝固条件などから内部欠陥の発生が懸念される箇所を判断し、必要に応じて確認することで品質の確保につなげています。
PT(浸透探傷試験)は、亀裂が疑われる製品、溶接補修を行った箇所、微細な引けなどが許容されない製品などに対して実施します。
製品や確認したい欠陥の種類に応じて、適切な検査方法を選択しています。
5.FCの材質・機械的性質の確認
FC(片状黒鉛鋳鉄)については、溶解工程で化学成分を一定の範囲に管理し、基本的にはその成分値によって材質を保証しています。
これに加えて別鋳込み供試材を採取し、FC250、FC300については月に一度、機械的性質の確認を行っています。
また、ギアやプーリー、タレットなど硬度が重要となる製品については、製品ごとに必要な硬度検査を行います。
溶接補修を行った場合などについても、補修時の熱による組織変化の影響を確認するため、必要に応じて硬度を測定します。
6.FCDの材質・黒鉛球状化率の確認
FCD(球状黒鉛鋳鉄)については、お客様の要求仕様に基づき、全出湯ごとに別鋳込み供試材を採取して機械的性質を確認しています。
供試材を使用して引張強さ、伸び、硬度などを確認し、要求された材質特性を満たしていることを確認します。
さらにFCD製品については全数で検査面を研磨し、ポータブル顕微鏡を使用して黒鉛の状態を観察します。
FCDでは黒鉛が適切に球状化していることが重要なため、黒鉛球状化率を確認して製品の材質を評価します。
溶解工程で行う化学成分の管理だけでなく、供試材による機械的性質の確認と、実際の製品における黒鉛組織の確認を組み合わせて品質を確認しています。
7.異常が確認された製品への対応
検査によって要求品質を満たしていないことが明らかな製品については、不適合品として処置します。
一方、手直しや溶接補修などによって使用可能となる可能性がある製品については、当社の判断だけで補修して出荷することはありません。
対象となる製品の状態をお客様へ報告し、処置方法をご確認いただいたうえで、指示された内容に従って対応します。
補修などの処置を行った製品については、必要な確認・再検査を行い、処置が完了したことを確認してから次工程へ進めます。
8.塗装
すべての検査に合格した製品、またはお客様から指示された処置が完了した製品は、必要に応じて塗装工程へ進みます。
使用する塗料や塗装仕様は、お客様から指定された内容に従います。
製品によって下塗りのみを行う場合と、本塗装まで行う場合があり、当社ではいずれにも対応しています。
塗装前には製品表面を清掃し、主に圧送タンクを使用したスプレー塗装を行います。また、指定された塗装仕様に応じて2液ウレタン塗料などによるスプレー塗装にも対応しています。
スプレーでは塗料が届きにくい箇所や、塗り漏れが確認された箇所については、必要に応じて刷毛を使用して補修します。
機械加工前の鋳物については、加工によって塗膜も除去されることを前提として、通常は加工予定面についても塗装します。
お客様から加工面などへの塗装を禁止する指定がある場合には、マスキングを行って塗料が付着しないよう対応します。
また、塗装を行わない製品で防錆処理の指定がある場合には、機械油などを使用して防錆処理を行います。
9.出荷前の製品確認
塗装が完了した製品は、出荷明細表に基づいて出荷準備を行います。
出荷する製品を準備する際には、出荷明細表と製品に設けられた鋳出し文字を照合し、対象となる製品に間違いがないことを確認します。
また、この段階でも製品の状態を大まかに確認し、塗装漏れなどが見つかった場合には必要な処置を行います。
製造・検査を終えた後にも現品と出荷情報を照合することで、異品の出荷防止につなげています。
10.製品に応じた梱包
鋳物は大きさや重量、形状が製品ごとに大きく異なるため、梱包方法についても製品に応じて使い分けています。
専用の出荷治具を使用する製品、パレットへ積み上げてストレッチフィルムで固定する製品、枕木を敷いてその上へ製品を載せる大型品など、それぞれの製品に適した方法で出荷準備を行います。
積込み方法についても同様に、製品の重量や大きさ、梱包状態などに応じて、天井クレーン、フォークリフト、または人手によって積込みを行います。
11.検査記録・供試材の添付
お客様から指定がある製品については、製品だけでなく必要な検査記録や供試材などもあわせて出荷します。
初品については必ず寸法・形状の確認を行っているため、要求に応じて初品検査表を添付します。
また、FCD製品については、指定に応じて別鋳込みした供試材を製品と一緒に送付する場合があります。
製品そのものだけでなく、必要な品質記録や供試材をあわせて提供することで、お客様側でも製品の品質を確認できるよう対応しています。
製品ごとに必要な品質を確認して出荷します
鋳物の検査では、すべての製品に同じ検査を行えばよいわけではありません。
外観や仕上げ状態を確認する基本的な検査に加え、製品の形状や用途、材質、要求仕様に応じて、寸法測定、3Dスキャン、硬度検査、UT、PT、機械試験、黒鉛球状化率の確認などを組み合わせて品質を確認します。
また、図面や仕様で指定された検査だけでなく、製品形状や過去の製造実績から品質上のリスクが考えられる場合には、必要に応じて自主的な確認を行うことも重要です。
検査で異常が確認された場合には適切な処置を行い、品質が確認された製品のみを塗装・出荷工程へ進めます。
鋳型の製作から始まった鋳物づくりは、溶解・注湯、冷却・型ばらし、仕上げ、熱処理、検査、塗装を経て、最終的に出荷する製品と現品を照合し、お客様へ納入することで完了します。
当社では、それぞれの工程で必要な確認と管理を積み重ねることで、安定した鋳物品質の確保に取り組んでいます。