鋳鉄の密度はどれくらい?FC・FCDの重量計算と鋼との違い

鋳鉄の密度はどれくらい?

鋳物の重量を計算するときに必要になる数値の一つが「密度」です。

鋳鉄は鉄を主成分とする材料なので、「鉄と同じくらいの密度」と考えられることがあります。

しかし、一般的な鋳鉄の密度はおおむね約7.0~7.3g/cm³程度であり、純鉄や鋼よりもやや低い値になります。

また、同じ鋳鉄でもFC(片状黒鉛鋳鉄)やFCD(球状黒鉛鋳鉄)、化学成分、組織などによって密度はわずかに異なります。

さらに、鋳造時には鋳鉄を高温で溶解して使用するため、常温の固体状態と「溶湯」の状態でも密度は異なります。

この記事では、鋳鉄の密度や比重について、純鉄や鋼との違い、FCとFCDの違い、溶湯時の密度、重量の計算方法などをご紹介します。

そもそも「密度」とは?

密度とは、一定の体積の中にどれだけの質量があるかを表す値です。

一般的には、次の関係で表されます。


密度 = 質量 ÷ 体積

金属材料では「g/cm³」や「kg/m³」といった単位がよく使用されます。

例えば密度7.2g/cm³の材料であれば、1cm³あたりの質量は7.2gです。

これを少し大きな単位にすると、

  • 1cm³:約7.2g
  • 1L:約7.2kg
  • 1m³:約7,200kg

となります。

つまり、材料の体積が分かれば、その体積に密度を掛けることで、おおよその重量を計算することができます。

鋳鉄の「比重」と「密度」は何が違う?

鋳鉄について調べると、「密度」だけでなく「比重」という言葉が使われることがあります。

密度は、一定の体積にどれだけの質量があるかを表す値で、
「g/cm³」や「kg/m³」などの単位で表します。

一方、比重は、ある物質の密度を基準となる物質の密度と比較した値です。
一般的には水を基準として表されるため、比重には単位がありません。

例えば、鋳鉄の密度を7.2g/cm³、水の密度を約1.0g/cm³とすると、
鋳鉄の比重はおおよそ、


7.2 ÷ 1.0 ≒ 7.2

となります。

そのため、鋳鉄では「密度7.2g/cm³」と「比重7.2」が、
実務上ほぼ同じ数値として扱われることがあります。

ただし、密度と比重は本来別の物理量です。
密度には単位がありますが、比重には単位がありません。

鋳鉄の重量計算を行う場合には、
比重そのものではなく、体積に対応した単位の密度を使用すると分かりやすくなります。

鋳鉄の密度は約7.0~7.3g/cm³|比重では約7.0~7.3

鋳鉄の密度は、材質や化学成分、組織などによって異なりますが、一般的にはおおむね約7.0~7.3g/cm³程度です。

当社で主に取り扱っているFC(片状黒鉛鋳鉄)やFCD(球状黒鉛鋳鉄)についても、この範囲に入るものが多くなります。

代表的な材料と比較すると、おおよそ次のようになります。

  • アルミニウム:密度 約2.7g/cm³(比重 約2.7)
  • FC(片状黒鉛鋳鉄):密度 約7.1~7.3g/cm³(比重 約7.1~7.3)
  • FCD(球状黒鉛鋳鉄):密度 約7.0~7.2g/cm³(比重 約7.0~7.2)
  • 純鉄:密度 約7.87g/cm³(比重 約7.87)
  • 鋼:密度 約7.8~7.9g/cm³(比重 約7.8~7.9)

これらはあくまで代表的な値であり、すべての鋳鉄が同じ密度になるわけではありません。

例えば、炭素量、けい素量、黒鉛量、基地組織、その他の合金元素などによっても密度は変化します。

なぜ鋳鉄は純鉄より密度が低い?

鋳鉄の主成分は鉄ですが、純粋な鉄だけでできているわけではありません。

鋳鉄には炭素やけい素などが含まれており、特に一般的なFCやFCDでは炭素の一部が「黒鉛」として組織中に存在しています。

この黒鉛が、鋳鉄の密度を考えるうえで重要になります。

純鉄の密度が約7.87g/cm³であるのに対し、黒鉛の密度は約2.2g/cm³です。

つまり、鉄と比較して非常に密度の低い黒鉛が組織中に存在するため、材料全体として見た鋳鉄の密度は純鉄より低くなります。

また、鋳鉄にはけい素などの元素も含まれており、これらの化学成分も密度に影響します。

そのため、
「鉄が主成分だから密度は7.87g/cm³」ではなく、鋳鉄としての組成や組織を考える必要があります。

FCとFCDで密度は違う?

鋳鉄にはさまざまな種類がありますが、代表的なものにFC(片状黒鉛鋳鉄)とFCD(球状黒鉛鋳鉄)があります。

FCでは黒鉛が片状に存在しているのに対し、FCDではマグネシウムなどによる球状化処理によって黒鉛を球状にしています。

この黒鉛形状の違いは、引張強さ、伸び、振動減衰性などの機械的性質に大きな影響を与えます。

一方、密度については「FCだから必ずこの値、FCDだから必ずこの値」と単純に決めることはできません。

一般的な参考値として、FCでは約7.1~7.3g/cm³、FCDでは約7.0~7.2g/cm³程度の値が使用されることがあります。

しかし、実際の密度には黒鉛形状だけでなく、黒鉛量、炭素量、けい素量、基地組織なども影響します。

そのため、FCとFCDでは密度の範囲が重なっており、密度だけから材質を判断することはできません。

鋳鉄は鋼より軽い?

鋳鉄と鋼はどちらも鉄を主成分とする材料ですが、密度には違いがあります。

鋳鉄の密度を7.2g/cm³、鋼の密度を7.85g/cm³として比較してみます。

同じ体積であれば、


7.2 ÷ 7.85 ≒ 0.92

となるため、鋳鉄は鋼より約8%軽い計算になります。

例えば、同じ形状の鋼製品が1,000kgであった場合、単純に密度だけで比較すると、


1,000kg × 7.2 ÷ 7.85 ≒ 917kg

となります。

ただし、これはあくまで「同じ体積」で比較した場合です。

実際の製品では、材料によって必要な肉厚、リブ形状、強度設計などが異なるため、鋼製品をそのまま鋳鉄へ変更すれば必ず約8%軽くなるという意味ではありません。

鋳造時の「溶湯」は密度が異なります

ここまで紹介してきた鋳鉄の密度は、主に常温付近の固体状態における値です。

しかし、鋳物を製造するときには鋳鉄を高温で溶解し、「溶湯」の状態で鋳型へ注湯します。

この溶湯状態では、常温の固体状態と同じ密度にはなりません。

金属は温度が上昇すると熱膨張によって体積が増加します。

質量そのものが変わらなくても体積が大きくなるため、
高温になるほど密度は低くなる傾向があります。

鋳鉄溶湯の密度は、温度や化学成分、測定方法などによって文献値に幅がありますが、おおむね6g/cm³台後半程度の値が扱われることがあります。

そのため、常温の鋳鉄で使用する7.2g/cm³程度の値を、そのまま高温の溶湯にも使用することはできません。

温度が高いほど溶湯の密度は小さくなる

鋳鉄溶湯は、注湯温度などによって密度が変化します。

例えば、同じ化学成分の溶湯であっても、温度が高くなるほど熱膨張によって体積が増えるため、一般的には密度が低下します。

反対に、溶湯が冷却されると体積が小さくなり、液体状態では密度が増加していきます。

ただし、鋳鉄では液相から固相へ変化する過程で黒鉛やオーステナイトなどが晶出するため、凝固が始まってからの密度変化は単純な熱収縮だけでは説明できません。

また、炭素やけい素をはじめとする化学成分によっても溶湯の密度は変化します。

そのため、
鋳鉄溶湯の密度は一つの固定された数値ではなく、材質と温度によって変化する物性値
として考える必要があります。

同じ1,000kgでも固体と溶湯では体積が違う

密度が変われば、同じ重量でも必要となる体積は変わります。

例えば、1,000kgの鋳鉄について考えてみます。

常温の固体状態の密度を7.2g/cm³とすると、


1,000kg ÷ 7,200kg/m³ ≒ 0.139m³

となり、体積は約139Lです。

一方、溶湯状態の密度を仮に6.7g/cm³とすると、


1,000kg ÷ 6,700kg/m³ ≒ 0.149m³

となり、体積は約149Lになります。

同じ1,000kgでも、この条件では溶湯状態の方が約10L大きな体積を占めることになります。

この違いは、製品重量を計算するときにはそれほど意識する必要がありませんが、溶解炉や取鍋など「溶湯を入れる容積」を考える場合には重要になります。

取鍋の容量は固体の密度だけでは計算できません

例えば、取鍋の内部容積が1,000Lであったとします。

常温の鋳鉄密度7.2kg/Lだけで単純計算すると、


1,000L × 7.2kg/L = 7,200kg

となります。

しかし、実際に取鍋へ入れるのは常温の固体鋳鉄ではなく、高温の溶湯です。

溶湯の密度を仮に6.7kg/Lとすると、同じ1,000Lでも、


1,000L × 6.7kg/L = 6,700kg

となります。

さらに、実際の取鍋では縁まで溶湯を満杯にすることはできません。

運搬時の揺れや注湯作業、安全性などを考慮して、上部に十分な余裕を確保する必要があります。

そのため、取鍋の「容積」と実際に安全に保持できる「溶湯重量」は同じ考え方ではありません。

取鍋や溶解設備の容量を考える場合には、
高温状態での溶湯密度と実際に使用できる容積の両方を考える必要があります。

溶湯が固まると密度はどうなる?

一般的な金属では、液体から固体へ凝固すると体積が小さくなります。

液体状態では比較的自由に動いていた原子が、固体になると一定の結晶構造をつくるためです。

しかし、鋳鉄の凝固は少し複雑です。

鋳鉄では凝固過程でオーステナイトとともに黒鉛が晶出します。

黒鉛は鉄と比較して密度が非常に低いため、黒鉛の晶出は材料の体積を増加させる方向に働きます。

そのため鋳鉄の凝固では、

  • 溶湯が冷却されることによる収縮
  • 液体から固体へ変化することによる体積変化
  • オーステナイトの晶出
  • 黒鉛の晶出による膨張

などが同時に進行します。

つまり、鋳鉄は「温度が下がった分だけ単純に縮んで固まる」という材料ではありません。

黒鉛の晶出による膨張は鋳造にとって重要です

鋳鉄の凝固時に起こる黒鉛の晶出と体積膨張は、鋳造方案を考えるうえでも重要です。

鋳型へ注湯された溶湯は、冷却・凝固する過程で体積が変化します。

凝固収縮に対して十分な溶湯が供給されなければ、製品内部に引け巣や引けによる空隙が発生する可能性があります。

一方、鋳鉄では黒鉛が晶出する際の膨張が、この凝固収縮の一部を補う方向に働きます。

そのため、鋳鉄の凝固挙動を考える場合には、単純な熱収縮だけではなく、
黒鉛の晶出による膨張を含めた体積変化
を考える必要があります。

また、FC、FCDなど黒鉛形状の異なる鋳鉄では凝固挙動も異なるため、引け巣の発生傾向や押湯方案なども同じとは限りません。

溶湯の密度は凝固解析にも使われます

現在の鋳造では、鋳型へ溶湯がどのように流れるか、どの部分から凝固するか、引け巣が発生する可能性があるかなどをコンピューター上で予測する鋳造シミュレーションが利用されています。

このような解析では、溶湯の温度、粘度、熱伝導率、比熱など、さまざまな物性値が必要になります。

密度もその中の重要な物性値の一つです。

特に、溶湯の流動や凝固時の体積変化を計算する場合には、密度が温度によってどのように変化するかを考慮する必要があります。

そのため、鋳鉄の密度は単に「完成した鋳物の重量を計算するための数値」だけではありません。


溶解、注湯、凝固、引け巣対策など、鋳造工程そのものにも関係する重要な物性値です。

鋳鉄の重量はどうやって計算する?

完成した鋳物のおおよその重量は、体積と密度から計算することができます。

基本的な計算は、


重量 = 体積 × 密度

です。

例えば、体積が0.1m³の鋳鉄製品があるとします。

鋳鉄の密度を7,200kg/m³として計算すると、


0.1m³ × 7,200kg/m³ = 720kg

となります。

したがって、この製品の概算重量は約720kgとなります。

単純な直方体で重量を計算してみる

例えば、

500mm × 400mm × 100mm

の中実の直方体を鋳鉄で製造すると仮定します。

まず体積を求めると、

500mm × 400mm × 100mm = 20,000,000mm³

となります。

これは0.02m³です。

密度を7,200kg/m³とすると、


0.02m³ × 7,200kg/m³ = 144kg

となります。

したがって、この直方体の概算重量は約144kgとなります。

複雑な鋳物ではCADから体積を求めることができます

実際の鋳物は、単純な直方体や円柱だけで構成されているものばかりではありません。

工作機械や印刷機械などに使用される鋳物では、リブ、ボス、穴、中空部、肉厚変化などがあり、非常に複雑な形状になることがあります。

このような製品を手計算だけで正確に体積計算することは現実的ではありません。

3D CADデータがある場合には、CAD上で製品体積を算出し、その体積に使用する材質の密度を設定することで理論重量を求めることができます。

特に大型鋳物では、製品重量が数百kgから数tになることもあるため、設計や見積りの段階でおおよその重量を把握することが重要になります。

図面重量と実際の鋳物重量が違うこともあります

CADで求めた体積に密度を掛ければ理論的な重量を計算することができます。

しかし、実際に製造した鋳物の重量が計算値と完全に一致するとは限りません。

鋳物には、

  • 加工代
  • 抜き勾配
  • 鋳造R
  • 肉厚や寸法のばらつき
  • 中子によって形成される内部形状
  • 鋳造方案上必要となる形状

などがあります。

特に、完成加工品の3Dデータを使用して重量計算した場合、鋳放し状態では加工代が付いているため、実際の鋳物重量は計算値より重くなります。

また、密度そのものも材質や化学成分によってわずかに変化します。

大型鋳物では数%の差であっても、重量にすると数十kg以上の違いになることがあります。

そのため、運搬設備やクレーン能力などを検討する場合には、完成品の理論重量だけではなく、実際の鋳造形状を考慮する必要があります。

鋳物重量から必要な溶湯量も考える必要があります

鋳物を製造するときに必要となる溶湯は、完成する製品の重量だけではありません。

実際の鋳造では、製品本体に加えて湯口、湯道、押湯などにも溶湯が必要になります。

例えば完成品重量が1,000kgであっても、1,000kgの溶湯だけで製造できるわけではありません。

製品形状や鋳造方案によって必要となる湯口・湯道・押湯重量が異なるため、実際の注湯重量は完成品重量より大きくなります。

この完成品重量と注湯重量の関係は「歩留まり」にも関係します。

製品重量を正確に把握することは、必要な溶湯量、溶解量、取鍋容量などを検討するうえでも重要です。

密度が低ければ鋳物内部に欠陥がある?

鋳物内部に引け巣や空隙が存在すれば、その部分には金属が存在しないため、同じ外形寸法で比較すると重量は小さくなります。

そのため、理論重量と実重量の差から内部欠陥を確認できるのではないかと考えることもできます。

しかし、
「重量が軽いから内部に欠陥がある」と単純に判断することはできません。

実際の鋳物重量には、製品寸法、加工代、中子形状、鋳造公差、化学成分など、さまざまな要素が影響します。

また、小さな引け巣や内部欠陥であれば、製品全体の重量に対する割合は非常に小さいため、一般的な重量測定だけで検出することは困難です。

内部の健全性を確認する必要がある場合には、要求品質や製品形状に応じて超音波探傷試験(UT)などの非破壊検査を使用します。

密度や重量は鋳物を管理するための一つの情報ではありますが、それだけで鋳物の品質を判断するものではありません。

固体と溶湯では使用する密度を使い分ける必要があります

ここまで見てきたように、「鋳鉄の密度」といっても、使用目的によって考え方が異なります。

完成した鋳物の重量を計算する場合には、常温付近の固体状態の密度を使用します。

一方、溶解炉や取鍋などの容量から保持できる溶湯重量を考える場合には、高温の液体状態における密度を考える必要があります。

つまり、

  • 製品重量の計算 → 固体状態の密度
  • 取鍋・溶解炉の容量計算 → 溶湯状態の密度
  • 凝固解析 → 温度や凝固状態によって変化する密度

というように、目的によって使用する密度を使い分ける必要があります。

鋳鉄の密度は単なる「重量の数値」ではありません

一般的な鋳鉄の密度は、常温の固体状態ではおおむね約7.0~7.3g/cm³程度で、比重としてもおおよそ7.0~7.3程度です。

純鉄や鋼より密度が低い理由の一つは、鋳鉄の組織中に密度の低い黒鉛が存在するためです。

この密度を使用することで、製品の体積から鋳物のおおよその重量を求めることができます。

一方、鋳造時の高温の溶湯では熱膨張によって体積が大きくなるため、固体状態よりも密度は低くなります。

さらに、鋳鉄が凝固する過程では、冷却による収縮だけでなく、オーステナイトや黒鉛の晶出による体積変化も生じます。

特に黒鉛の晶出による膨張は、鋳鉄特有の凝固挙動の一つであり、引け巣や押湯方案などを考えるうえでも重要です。

つまり、鋳鉄の密度は単に、


「鋳鉄1cm³が何gあるか」

というだけの数値ではありません。


製品重量、溶解量、取鍋容量、注湯重量、凝固挙動、引け巣対策など、鋳造工程のさまざまな場面に関係する基本的な物性値です。

鋳鉄の重量を計算するときには、使用する材質や製品形状だけでなく、その密度が「固体状態のものなのか」「溶湯状態のものなのか」を意識して使用することが重要です。

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