サンドメタル比とは?鋳物重量と金枠寸法から必要な砂量を概算する方法
サンドメタル比とは?
砂型鋳造では、製品となる金属だけでなく、鋳型をつくるために大量の砂を使用します。
このとき、鋳物の重量に対してどの程度の砂を使用しているかを表す考え方の一つが「サンドメタル比」です。
サンドメタル比には資料や用途によって異なる定義が用いられる場合がありますが、本記事では、
サンドメタル比 = 使用する砂重量 ÷ 製品重量
として扱います。
例えば、製品重量1,000kgの鋳物を製造するために4,500kgの砂を使用する場合、
4,500 ÷ 1,000 = 4.5
となり、サンドメタル比は4.5となります。
つまり、製品1kgを製造するために約4.5kgの砂を使用しているということです。
サンドメタル比を把握することで、製品重量に対してどの程度の砂を使用しているのかを比較することができます。
さらに、砂使用量が分かれば、造型材料の使用量や造型設備への負荷、砂再生量などを考えるための基礎にもなります。
この記事では、製品重量と金枠寸法からサンドメタル比を概算する方法についてご紹介します。
サンドメタル比を求めるには砂の体積を知る必要があります
砂重量を求めるためには、まず鋳型の中にどれだけの砂が存在するのかを考える必要があります。
基本的な考え方は、
砂体積 = 金枠内寸体積 − 溶湯が占める体積
です。
金枠の内部には、大きく分けると、
- 鋳型砂
- 中子砂
- 製品となる金属が入る空間
- 湯口、湯道、押湯などに金属が入る空間
があります。
そのため、上下型を合わせた金枠の内寸体積から、製品および鋳造方案に必要な金属の体積を引くことで、鋳型に使用される砂の体積を概算することができます。
製品形状が複雑でも体積は重量から求められます
鋳物には、単純な箱形状だけでなく、リブ、ボス、曲面、中空部などを持つ複雑な製品が数多くあります。
このような製品では、一つひとつの寸法から体積を計算することは容易ではありません。
しかし、金属の体積は、
体積 = 重量 ÷ 密度
で求めることができます。
そのため、製品重量と材料の密度が分かれば、製品がどのような形状であっても金属としての総体積を求めることができます。
例えば、同じ材質で重量が1,000kgであれば、単純な直方体でも、リブや曲面の多い複雑な鋳物でも、金属そのものが占める総体積は同じです。
つまり、この計算では製品形状を一つずつ分解して体積を求める必要がありません。
これは、詳細な3Dデータや鋳造方案がまだ確定していない段階でも、製品重量から金属体積や砂体積を概算できるという利点があります。
ただし、ここで求められるのはあくまで金属の「総体積」です。
局部的な砂厚、鋳型内での製品配置、中子形状、冷却条件などを検討する場合には、製品形状や鋳造方案の情報が必要になります。
製品重量だけでなく鋳造歩留まりを考える
鋳型へ注湯する金属は、すべてが製品になるわけではありません。
砂型鋳造では、製品本体に加えて、湯口、湯道、押湯などにも溶湯が入ります。
そのため、製品重量よりも実際の注湯重量の方が大きくなります。
この関係を表す指標の一つが「鋳造歩留まり」です。
鋳造歩留まりを、
鋳造歩留まり = 製品重量 ÷ 注湯重量
とすると、
注湯重量 = 製品重量 ÷ 鋳造歩留まり
で求めることができます。
例えば、製品重量1,000kg、鋳造歩留まり80%と仮定すると、
1,000 ÷ 0.80 = 1,250kg
となります。
つまり、この製品を製造するためには、製品本体と湯口・湯道・押湯などを合わせて約1,250kgの溶湯が必要になるということです。
注湯重量から溶湯が占める体積を求める
注湯重量が分かれば、次に鋳型内部で金属が占める体積を求めます。
基本式は、
溶湯体積 = 注湯重量 ÷ 溶湯密度
です。
常温における鋳鉄の密度はおおむね7.0~7.3g/cm³程度ですが、高温の溶湯状態では熱膨張によって体積が増えるため、密度は低くなります。
溶湯密度は温度や化学成分などによって変化するため、一つの固定値ではありません。
概算では条件に応じた代表値を使用します。
ここでは計算例として、溶湯密度を6,700kg/m³と仮定します。
先ほど求めた注湯重量1,250kgの場合、
1,250 ÷ 6,700 ≒ 0.187m³
となります。
したがって、製品と湯口・湯道・押湯などを合わせて、鋳型内部の約0.187m³を溶湯が占めることになります。
金枠内寸から溶湯体積を引けば砂体積を求められる
次に、上下型を合わせた金枠内寸の総体積を求めます。
例えば、上型・下型ともに内寸が、
2,000mm × 1,500mm × 500mm
であるとします。
1枠あたりの体積は、
2.0 × 1.5 × 0.5 = 1.5m³
です。
上下2枠では、
1.5 × 2 = 3.0m³
となります。
ここから、先ほど求めた溶湯体積0.187m³を引くと、
3.0 − 0.187 = 2.813m³
となります。
したがって、この鋳型に存在する砂の体積は概算で約2.813m³となります。
この砂体積には中子も含まれます
ここで重要なのが、中子の扱いです。
今回の計算では、
金枠内寸体積 − 溶湯が占める体積
によって砂体積を求めています。
そのため、この計算結果には主型の砂だけでなく、中子として使用される砂の体積も含まれています。
例えば、金枠内部に大きな中子が存在している場合、その部分には溶湯が入りません。
したがって、中子の体積は「砂が占めている体積」として計算結果に残ります。
今回のサンドメタル比では、製品を製造するために使用する主型砂と中子砂を合わせた総砂量を対象とするため、この考え方で計算することができます。
ただし、主型と中子では造型方法や使用する設備が異なる場合があります。
そのため、後述する造型時間などを砂重量から概算する場合には、中子の割合が大きい製品ほど実際の工程との誤差が大きくなる可能性があります。
砂体積から砂重量を求める
砂体積が分かれば、次に砂重量を求めます。
基本式は、
砂重量 = 砂体積 × 砂の見掛密度
です。
ここで注意したいのは、珪砂そのものの真密度をそのまま使用するわけではないということです。
鋳型の中では砂粒同士の間に空隙が存在するため、鋳型として充填された状態での見掛密度は、砂粒そのものの真密度より低くなります。
また、見掛密度は、生型、自硬性鋳型、3Dプリンタ砂型などの造型プロセスや、砂の粒度、充填方法、締固め状態などによって異なります。
実際の使用量を精密に管理する場合には、使用している造型砂の見掛密度を測定する方法があります。
一方、見積りや事前検討などの概算では、使用する造型プロセスに応じた一般的な値を使用することもできます。
ここでは計算例として、砂の見掛密度を1,600kg/m³と仮定します。
先ほど求めた砂体積2.813m³に対して、
2.813 × 1,600 ≒ 4,501kg
となります。
したがって、この鋳型に使用される砂重量は概算で約4,500kgとなります。
サンドメタル比を計算する
ここまでで、製品重量と砂重量が分かりました。
製品重量が1,000kg、砂重量が約4,501kgなので、
4,501 ÷ 1,000 ≒ 4.5
となります。
したがって、この製品のサンドメタル比は約4.5です。
これは、
製品1kgを製造するために約4.5kgの砂を使用する
という意味になります。
サンドメタル比と鋳造歩留まりは別の指標です
ここまでの計算には、「鋳造歩留まり」と「サンドメタル比」という二つの比率が登場しました。
どちらも鋳造における効率を考えるための指標ですが、見ている対象が異なります。
鋳造歩留まりは、
鋳造歩留まり = 製品重量 ÷ 注湯重量
であり、投入した金属のうち、どの程度が製品になるかを見る指標です。
一方、今回のサンドメタル比は、
サンドメタル比 = 砂重量 ÷ 製品重量
であり、製品を製造するためにどの程度の砂を使用しているかを見る指標です。
例えば、
- 製品重量:1,000kg
- 注湯重量:1,250kg
- 砂重量:4,500kg
であれば、鋳造歩留まりは80%、サンドメタル比は4.5となります。
つまり、鋳造歩留まりは主に金属側の効率、サンドメタル比は砂側の効率を見るための一つの指標と考えることができます。
サンドメタル比が高いとどうなる?
サンドメタル比が高いということは、同じ製品重量を製造するために、より多くの砂を使用しているということです。
例えば、製品重量1,000kgの場合、
- サンドメタル比3:砂重量3,000kg
- サンドメタル比6:砂重量6,000kg
となります。
自硬性鋳型などでは、使用する砂量が増えれば、砂だけでなく樹脂や硬化剤などの使用量も増える傾向があります。
また、造型後には使用した砂を型ばらしし、搬送し、必要に応じて再生処理する必要があります。
そのため、砂使用量の増加は、
- 砂そのものの使用量
- 樹脂や硬化剤などの造型材料使用量
- ミキサーの処理量
- 砂搬送設備への負荷
- 型ばらし後の砂処理量
- 砂再生設備への負荷
などにも関係します。
このように、サンドメタル比は単に砂と製品の重量比を示すだけでなく、造型工程全体の負荷を考えるための一つの目安にもなります。
砂重量から造型材料の使用量も概算できます
自硬性鋳型では、砂に一定割合の樹脂や硬化剤を添加して鋳型を製作します。
そのため、砂重量が分かれば、設定している添加率から樹脂や硬化剤の使用量についても概算することができます。
例えば、砂重量5,000kgに対して樹脂添加率を1.0%と仮定すると、
5,000 × 0.01 = 50kg
となります。
さらに、硬化剤を樹脂重量に対して一定割合で使用する場合には、そこから硬化剤重量も計算できます。
実際の添加率は使用する樹脂、硬化剤、砂、温度、必要な硬化時間などによって異なります。
しかし、
金枠寸法 → 砂体積 → 砂重量 → 造型材料使用量
という流れで、見積りや事前検討の段階でも造型材料の使用量を概算することができます。
砂重量と設備能力から砂供給時間も概算できます
使用する砂重量と造型設備の処理能力が分かれば、必要な砂を供給するための時間も概算することができます。
例えば、必要な砂重量が4,500kgで、連続ミキサーの能力が20t/hであると仮定します。
この場合、
4.5 ÷ 20 = 0.225時間
となります。
分に換算すると、
0.225 × 60 = 13.5分
です。
したがって、この条件では理論上、約13.5分で必要な砂量を供給できることになります。
ただし、この時間はあくまで設備能力から求めた理論的な砂供給時間です。
実際の造型では、
- 金枠や木型の準備
- ミキサーの移動
- 砂の充填
- 締固め
- 表面の仕上げ
- 硬化
- 抜型
- 中子の製作や設置
など、さまざまな作業が必要になります。
そのため、砂供給時間そのものを実際の造型時間とすることはできません。
また、中子を使用する場合には、主型と中子で異なるミキサーや設備を使用することもあります。
今回の計算では中子砂も総砂量に含まれているため、中子使用量が多い製品では、単純な砂重量と主型設備能力だけから求めた時間と実際の造型時間との差が大きくなる場合があります。
あくまで概算値として利用することが重要です。
サンドメタル比は低ければ低いほど良い?
砂使用量だけを考えれば、サンドメタル比が低い方が効率的に見えます。
同じ製品重量であれば、使用する砂が少ないほど、砂やバインダーなどの使用量を抑えることができます。
さらに、ミキサーや搬送設備、砂再生設備で処理する砂量も少なくなります。
しかし、サンドメタル比は単純に低くすればよいものではありません。
鋳型には、高温の溶湯を安全に保持し、凝固するまで製品形状を維持するために必要な強度や砂厚が必要です。
金枠を小さくしすぎたり、製品周囲の砂厚を過度に小さくしたりすると、鋳型強度や安全性などに影響する可能性があります。
したがって、重要なのはサンドメタル比そのものを小さくすることではなく、
必要な鋳型強度や安全性を確保したうえで、過剰な砂使用を抑えること
です。
砂量は鋳物の冷却にも関係します
砂型は、単に溶湯の形状を保持するだけではありません。
注湯された溶湯から熱を受け取り、鋳物を冷却する役割も持っています。
そのため、鋳型に使用する砂の種類、砂厚、熱的性質などは、鋳物の冷却や凝固にも関係します。
ただし、サンドメタル比が同じであれば同じ冷却条件になるわけではありません。
例えば同じ量の砂を使用していても、製品周囲に均等な砂厚がある場合と、一部の砂厚が非常に薄い場合では、鋳物からの熱の逃げ方は異なります。
また、製品肉厚、鋳型形状、中子の配置、砂の種類などによっても冷却条件は変化します。
したがって、サンドメタル比は鋳型全体の砂量を見るための指標として利用できますが、局部的な凝固や冷却条件を直接評価する指標ではありません。
同じ製品重量でも金枠によってサンドメタル比は変わります
同じ重量の鋳物であっても、使用する金枠の大きさが異なれば必要な砂量は変わります。
例えば、同じ1,000kgの製品であっても、製品に対して非常に大きな金枠を使用すれば、金枠内部に占める砂の割合が大きくなります。
反対に、必要な砂厚や鋳造条件を確保したうえで、製品に適した大きさの金枠を使用すれば、砂使用量を抑えられる場合があります。
そのため、サンドメタル比を見ることで、
「この製品1kgを製造するために、どれだけの造型材料や設備能力を使用しているのか」
を考えることができます。
特に多品種の鋳物を製造する場合には、製品重量だけでは見えにくい造型工程の負荷を比較するための一つの指標として利用することができます。
サンドメタル比だけで生産効率は決まりません
サンドメタル比は便利な指標ですが、それだけで鋳物の生産効率を判断することはできません。
実際の鋳造では、
- 製品形状
- 鋳造歩留まり
- 金枠サイズ
- 中子の数や複雑さ
- 造型方法
- 造型設備能力
- 溶解能力
- 注湯作業
- 冷却時間
- 仕上げ工数
- 検査内容
など、さまざまな条件が生産性に影響します。
例えば中子の多い製品では、金枠内の主型砂量は少なくなる一方、中子を別工程で製作し、鋳型へ設置する作業が必要になります。
そのため、サンドメタル比だけを見て「砂が少ないから生産性が高い」と判断することはできません。
サンドメタル比は、あくまで製品に対する砂使用量を表す一つの指標として、他の生産条件と組み合わせて使用することが重要です。
詳細な鋳造方案がなくてもサンドメタル比は概算できます
今回の方法の特徴は、詳細な鋳造方案や複雑な体積計算を行わなくても、一定の条件が分かればサンドメタル比を概算できることです。
主に必要となるのは、
- 製品重量
- 金枠内寸
- 想定する鋳造歩留まり
- 溶湯密度
- 造型砂の見掛密度
です。
計算の流れをまとめると、
製品重量
↓
鋳造歩留まりから注湯重量を求める
↓
溶湯密度から金属が占める体積を求める
↓
金枠内寸体積から金属体積を引いて砂体積を求める
↓
砂の見掛密度を掛けて砂重量を求める
↓
砂重量を製品重量で割ってサンドメタル比を求める
という流れになります。
さらに砂重量が分かれば、樹脂・硬化剤などの造型材料使用量や、設備能力から砂供給時間についても概算することができます。
もちろん、実際の鋳造では中子、鋳造方案、設備条件、砂の充填状態などによって結果は変化します。
そのため、この計算だけで実際の材料使用量や造型時間を正確に求めることはできません。
しかし、見積りや事前検討の段階で、
「この製品を製造するために、おおよそどの程度の砂が必要なのか」
を把握するための方法として利用することができます。
サンドメタル比から鋳造工程を数字で考える
サンドメタル比は、砂重量と製品重量を比較した比較的単純な指標です。
しかし、その計算過程では、製品重量、鋳造歩留まり、溶湯密度、金枠体積、砂体積、砂重量など、鋳造工程に関係するさまざまな要素がつながっています。
さらに砂重量からは、造型材料の使用量や造型設備の処理量についても考えることができます。
重要なのは、サンドメタル比を単純に低くすることではありません。
製品形状や鋳造方案に必要な条件を満たしたうえで、適切な金枠を選定し、必要以上の砂を使用しないことが、材料使用量や設備負荷の低減につながります。
また、重量と密度の関係を利用すれば、複雑な形状の鋳物であっても、詳細な形状計算を行わずに金属の総体積を求めることができます。
このように、鋳造に使用する材料や設備能力を数字として捉えることで、経験だけでは見えにくい製品ごとの特徴や生産効率について考えることができます。